アドラストス

表記

 ギリシャ名:Ἄδραστος

 ローマ字転写:Adrastos

 多くの場合、「アドラストス」とだけ表記される。

性別

 男。

概要

 アドラストスは、アルゴスの王である。

逸話

 詳細はポリュネイケース - ギリシャ・ローマ神話を参照。

 アドラストスは軍を進め、七人の長とともにテーバイと戦うべく急いだ。長たちは次のごとくであった。アドラストス、アムピアラーオス、カパネウス、ヒッポメドーン、ポリュネイケース、テューデウス、パルテノパイオス。あるいは、ポリュネイケースとテューデウスを入れず、エテオクロスとメーキステウスを入れる。

 彼らはリュクルゴースを王に戴いていたネメアーに来り、水を求めた。そして彼らのためにヒュプシピュレーが幼児オペルテースを後に残して泉への道案内に立った。しかしヒュプシピュレーが泉を教えている間に、後に残された子供は大蛇に殺された。大蛇をアドラストスとその仲間がその場に現れて殺し、子供は葬った。しかしアムピアラーオスは、彼らにこの徴は未来を語るものであると言った。そして子供をアルケモロスを呼んだ。彼らはアルケモロスのためにネメアー祭の競技を行ない、競馬ではアドラストス、競走ではエテオクロス、拳闘ではテューデウス、跳躍と円盤ではアムピアラーオス、槍投げではラーオドコス、相撲ではポリュネイケース、弓術ではパルテノパイオスが勝利を得た。

 キタイローンに来た時、エテオクレースに協約通りにポリュネイケースに王権を譲るようにと前以て言わせるべく、テューデウスを使者に立てた。エテオクレースが耳をかさなかったので、テューデウスはテーバイ人をためしてみるつもりで一騎打ちを挑み、すべての者に打ち勝った。そこで彼らは五十人の武装した者どもをテューデウスが立ち去るところを待伏せさせたが、テューデウスはマイオーン以外のすべての者を殺し、その後陣営に赴いた。

 アルゴス人たちは武具に身をかためて城壁に近づき、七つの門があったので、アドラストスはホモローイダイ門に、カパネウスはオーギュギアイ門に、アムピアラーオスはプロイティダイ門にヒッポメドーンはオンカイダイ門に、ポリュネイケースはヒュプシスタイ門に、パルテノパイオスはエーレクトライ門に、テューデウスはクレーニダイ門に布置せられた。一方エテオクレースもまたテーバイ人を武装させ、同数の長をこれに対して布置し、敵に勝つ方法の予言を求めた。さてテーバイ人には盲目の予言者テイレシアースがあった。

 そこでテイレシアースは、テーバイ人が占いをたてた時に、クレオーンの子メノイケウスがアレースへの犠牲としてわれとわが身を捧げたならば、勝利を得るであろうと言った。これを聞いてメノイケウスは城門の前で自害した。戦闘となって、カドメイオス人(すなわち、テーバイ人)城壁へと雪崩をうって追いつめられ、カパネウスが梯子をひっつかみ、これによって城壁に攀じのぼらんとしたが、ゼウスはカパネウスを雷霆で撃った。これが起こった時にアルゴス人は逃げ出した。多くの者が殪れた時に、両軍の決議によって、エテオクレースとポリュネイケースは王座を賭して一騎打ちをなし、相討ちとなった。再び激烈な戦闘の間にアスタコスの子らは勲をたてた。イスマロスはヒッポメドーンを、レアデースはエテオクロスを、アムピディコスはパルテノパイオスを殪したからである。しかしエウリーピデースの言によれば、パルテノパイオスを殪したのはポセイドーンの子ペリクリュメノスであると。アスタコスの今一人の子メラニッポスはテューデウスの腹部に傷つけた。テューデウスが半死のありさまで横たわっている時、アテーナーゼウスより乞うて薬をもたらし、これによってテューデウスを不死にせんものと考えていた。しかしアムピアラーオスがこれを見てとって、テューデウスが自分の意見に反してテーバイに遠征すべくアルゴス人らを説き伏せたのでテューデウスを憎み、メラニッポスの首を切り取り、テューデウスに与えた。テューデウスはメラニッポスの頭を割って脳をくらった。これを見てアテーナーは嫌悪し、前の恩恵を中止し、与えることを惜しんだ。ペリクリュメノスがその背に傷つける前に、イスメーノス河へと遁れつつあるアムピアラーオスのためにゼウスが雷霆を投じて大地を引き裂いた。そこでアムピアラーオスは戦車および御者バトーン(あるいは、エラトーン)もろとも姿を消した。ゼウスはアムピアラーオスを不死とした。アドラストスのみは、その馬アレイオーンが救った。

 アドラストスは、アテーナイに来り、「憐れみの祭壇」に遁れて、哀訴者の枝をその上に置き、死骸を葬るように願った。アテーナイ人はテーセウスとともに軍を進めてテーバイを攻略し、死骸を血族者に葬るべく与えた。カパネウスの火葬壇が燃えている時に、エウアドネーは自ら火に投じてカパネウスとともに焼かれた。*1

系譜

兄弟、姉妹

後裔

配偶者不明(あるいは、なし)*2
  • アイギアレウス

*1:ギリシア神話』p133~137

*2:ギリシア神話』p138