ギリシャ神話③

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始まり

 世界は見渡す限りただ一つ、すなわち、カオスであった。

 神と自然が手を下して、海から地を切り離し、地と海から天を切り離した。

 地上に一人の神があって、出来上がったばかりの土地を整理した。

 そして、高等な動物が一つ必要になって、人間が造られた。

 プロメーテウスが、大地の土を取って、それを水で練り固めて、神々と同じ形に人間を造り上げた。

 また、プロメーテウスとエピメテウスは、人間製造の役目と、人間や他の動物に、生存に必要な能力を与えてやることを神から委任されていた。

 エピメテウスは、他の動物に何もかも与えつくしてしまった後で、人間の番になると、これというほどの物が一つもなくなっていた。

 エピメテウスがプロメーテウスに相談すると、プロメーテウスは、アテーナーの助けを借りて、天へ昇って、太陽の二輪車の火を自分のたいまつに移し取り、その火を人間のところへ持って下りた。*6

プロメーテウスの策謀

 神々と人間が諍いをしていた時のこと、プロメーテウスは、ゼウスを欺こうとした。

 そこで、牡牛(犠牲獣)を切り裂くと、ゼウスの前には、肉と脂肪に富んだ臓物を牡牛の胃袋で包んで置き、人間の前には、白い骨を艶々しい脂肪で包んで置いた。

 ゼウスは、この不公平な分け方に、プロメーテウス咎めた。

 すると、プロメーテウスは、ゼウス自らに分け前を選ばせた。

 そこでゼウスは、脂肪を選んだが、白い骨を見た時、大いに立腹した。

 それから、ゼウスは人間に火を与えなくなった。

火の略奪

 プロメーテウスは、ゼウスの裏をかいて、火を大茴香に入れて盗んだ。

 ゼウスは、人間の間に火の輝きを見ると、激怒した。

女の誕生

 ゼウスは人間に禍いを創った。すなわち、ヘーパイストスが土から、(神々が象った最初の)乙女(パンドーラー)を創った。

 というのも、第一の禍いとして、彼女から、人を破滅させる女たちの種族が生まれた。彼女のたちは男たちと一緒に暮らすにも、裕福とだけ連れ合う。

 第二の禍いとして、結婚しない者は(死ねば、縁の薄い親戚たちに財産をすっかり獲られてしまうため、)悲惨な老年に至り、結婚する者は(雄蜂のような、すなわち、他人の稼ぎを自分の胃袋の中に取り込む)妻女を持つことになり、止めどない悲しみを抱いたまま日を暮らす。

パンドーラーの甕

 ゼウスが、パンドーラーをエピメテウスのもとに遣わせると、エピメテウスは、(プロメーテウスに、ゼウスからの贈り物は決して受け取ってはならないと戒められていたのに、)パンドーラーを受け取った(あるいは、娶った)。

 エピメテウスの家には一つの甕があって、その甕の中にはある毒物が入っていた。パンドーラーは、(甕の中がなんであるかを知りたくて、)甕の大蓋を開けて、甕の中身を撒き散らし、(希望のみが外には飛び出ず、)人間に様々な苦難を招いてしまった。すなわち、病苦は昼となく夜となく人間に災厄を運んで勝手に襲ってくる。

縛られたプロメーテウス

 ゼウスは、プロメーテウスを(カウカサス山に)縛りつけた(あるいは、釘づけにした)。

 そして、毎日、鷲がプロメーテウスの肝臓(夜の間に生え出る)を食らった。

終わり

 ヘーラクレースが鷲を退治すると、プロメーテウスは苦痛から救われた。

 ゼウスは、ヘーラクレースを讃え、プロメーテウスに抱いていた怒りを鎮めた。

*1:『神統記』p67~79

*2:『仕事と日』p21~23

*3:ギリシア神話』p40,41

*4:ギリシアローマ神話』p31~33

*5:ギリシアローマ神話辞典』p200,224,225

*6:ギリシアローマ神話』p31,32