ギリシャ神話④

*1*2

始まり

 クロノスがまだ天上に君臨していた時代、神々は、最初に、人間の黄金の種族を作った。

 人間たちは、労苦も悲嘆も知らず、神々と異なることなく暮らしていた。

銀の時代

 黄金の種族が絶えた後、神々は、黄金の種族には遥かに劣る銀の種族を作った。

 人間たちは、己の無分別のゆえに、様々な禍いを被って、短い生涯を終える。

 また、神々を崇めることも、生贄を捧げることもしようとはしなかった。

 ゼウスは怒って、銀の種族を消してしまった。

青銅の時代

 ゼウスは、青銅の種族を作った。

 青銅の種族は、銀の種族に全く似ておらず、とねりこの樹から生じた。

 また、アレースの業(すなわち、戦い)と暴力をこととした。

 青銅の種族は、互いに討ちあって斃れ、ハーデースの館へ降っていった。

半神(英雄)の時代

 ゼウスは、先代よりも正しくかつ優れた、英雄たちの高貴なる種族で、半神と呼ばれるものを作った。

 しかし、この種族も、戦と闘いによって滅び去った。

終わり

 ゼウスは、今の世に生まれ住む鉄の種族を作った。

 鉄の種族は、昼も夜も労役と苦悩に苛まれる。

 いかなる人間には妬み心(ゼーロス)が取り付いて離れない。

 アイドス(廉恥)とネメシス(義憤)は、人間を見捨てて、神々のもとへ去る。

 こうして、人間には、悲惨な苦悩のみが残り、災難を防ぐ術もない。

*1:『仕事と日』p24~35

*2:ギリシアローマ神話』p34,35